インプラントと差し歯は、虫歯や歯周病などが原因で歯を失ってしまった場合に行う治療ですが、施術方法は大きく異なります。しかし双方にどのような違いがあるのかわからないという方も多くいらっしゃいます。そこで今回は、インプラントと差し歯の違いについて詳しく解説します。それぞれをしっかり把握して、ご自身に合った治療法を選べるようにしましょう。
目次
インプラントと差し歯の違いとは?
インプラントと差し歯はどちらも人工の歯を被せる治療法ですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。二つの大きな違いは、歯の根が残っているかどうかです。それぞれの詳しい治療法を解説いたします。
『インプラント』は歯の根がない場合の治療法
インプラントは、歯の根まで失ってしまった場合に有効な治療法です。インプラントの施術では、まず人工の歯の根(インプラント体)を顎の骨に埋入する一次手術を行います。インプラント体が顎の骨に定着するのを待ってから、インプラント体に土台を装着する二次手術を行います。歯の根が残っている場合、インプラント治療は行えないため、抜歯してからインプラント治療を行います。
『差し歯』は歯の根が残っている場合の治療法
差し歯は、歯の根が残っており歯の土台として使える状態の場合に有効な治療法です。虫歯が歯の奥まで進行し神経にまで達すると、神経を取り除く治療が必要です。歯を少し削る程度あれば被せ物をだけですみますが、神経まで奥深く削ると被せ物をしても歯は安定しません。差し歯の治療では、神経まで奥深く削った部分に棒状の土台を差し込み、その上から被せ物を装着させます。
インプラントと差し歯の具体的な違い
インプラントと差し歯についてそれぞれの項目を比較し、違いをみてみましょう。
費用の違い
インプラント治療は保険適用外です。事前の検査や手術の費用を含めると、1本30万~40万円ほどが相場の費用です。差し歯の場合、保険適用が可能かどうかで費用は大きく異なります。保険適用が可能な場合は、1本あたり5,000円~1万円ほどで差し歯の作成が可能であるため経済的です。一方、自由診療の素材の場合、10万~15万円ほどが目安となります。
メンテナンスの有無の違い
インプラントは継続的にメンテンスを行う必要があります。インプラントのアフターケアで注意すべき点は、インプラント周囲炎です。インプラント周囲炎とは、インプラント周辺の歯肉や骨が細菌に感染してしまい炎症を起こす状態のことです。進行スピードも早く自覚症状もないため、気づかないまま重症化するケースが多くみられます。またインプラントは高額な治療となりますが、メーカー保証がついていることがほとんどです。インプラントにトラブルがあった場合、メーカー保証を受けるには定期的なメンテナンスを受けていることが条件になるため、保証の観点からもメンテンスは必ず行う必要があります。
差し歯の場合は、インプラントのような保証はとくにありません。しかし歯の根が残っているため歯周病のリスクがあり、さらに歯根が割れたり砕けたりすることに注意が必要です。インプラントや差し歯に関わらず、1年に2~4回はメンテンスに通院することをおすすめします。
寿命の長さの違い
インプラント治療を受けたおよそ90%以上の方は、10~15年ほど経過しても適正な状態を維持しているとされています。メンテナンスをしっかりと継続させることで、さらに寿命を延ばせるケースもあります。インプラントは、入れ歯やブリッジなどと比較してもっとも寿命が長い治療法です。一方、差し歯に保険適用の素材を使用した場合、寿命の長さは5~8年ほどであり、自由診療の素材であれば、10年以上と寿命が長くなります。自由診療を選択すれば、治療費が高くなったとしても寿命を長持ちさせられるといったメリットがあります。
見た目の違い
インプラントは審美性の高さがひとつのメリットでもあります。天然の歯と同じような見た目が叶います。差し歯は、保険適用の場合は銀歯や硬質レジンの素材を使用するため、インプラントに比べると審美性は劣ります。前歯から中間までの歯は白い素材である硬質レジンの使用が可能ですが、長年の使用によって変色する可能性があります。奥歯の場合は銀歯を選択することになり、笑ったり口を大きく開けたりするとみえることもあります。審美性の高い素材を選ぶことも可能ですが、自費診療となります。
治療期間の違い
インプラントの治療期間は、3~6か月ほどかかります。最短で2か月、長い場合では1年以上かかるケースもあります。治療期間が長くかかる理由としては、インプラントを顎の骨に入れる手術のあとに骨とインプラントが定着するのを待つ必要があり、インプラントに土台を取り付けるための二次手術も必要になるからです。さらに骨の量が少ない方は骨を補強する処置も必要なり、治療期間はさらに長引く可能性があります。一方、差し歯の治療期間は1~2か月ほどであり、数回の通院で済むケースがほとんどです。
治療の流れの違い
それぞれの治療の大まかな流れです。
インプラント
カウンセリング
検査を行い、治療プランをたてる
インプラントを骨に埋入する手術
インプラントと骨が結合するのを待つ
インプラントに土台を装着する手術
定期メンテナンスを行う
差し歯
診察・検査
虫歯の除去治療
歯根の治療
歯根に土台を入れて差し歯の型をとる
差し歯ができたら装着する
定期メンテナンスを行う
インプラントのメリット・デメリット
インプラントのメリット・デメリットをまとめました。
メリット
● インプラントを装着するのに両サイドの健康な歯を削る必要がなく、周囲の歯に影響しません。
● 天然の歯のような噛む感覚が得られます。固い食べ物でもしっかりと噛んで、違和感なく使用できます。
● 審美性も高く自然な見た目で、口を大きく開いたり笑ったりするのにコンプレックスに感じていた方も自信を取り戻せます。
デメリット
● インプラントの治療費がデメリット部分としてあげられます。自由診療となり、1本あたり30万~40万円ほどとなるケースが多いようです。
● 手術を伴い長期間の治療が必要となるため、心身ともに負担がかかります。
● 炎症を起こすなど感染症リスクの恐れもあります。
差し歯のメリット・デメリット
差し歯のメリット・デメリットをまとめました。
メリット
● インプラントのような大がかりな手術を必要としません。
● 治療期間は短く、数回の通院で済みます。
● 差し歯の素材によっては費用を安く抑えられ、審美性を気にする方は自費診療での素材を選べます。
デメリット
● 保険適用の素材は前歯や中間の歯までは硬質レジンが可能、奥歯の場合には銀歯だけとなります。
● 硬質レジンは白い素材で歯の色に合わせて色みを選択できますが、次第に変色する性質もあります。
まとめ
インプラントと差し歯の違いについて解説しました。歯根がない場合にはインプラント、土台として使える歯根が残っている場合は差し歯を選択することになります。違いをよく理解し、ご自身の治療の際にどのような治療を希望するのか参考にしていただければ幸いです。